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4/14マチネ 『明智小五郎の事件簿~黒蜥蜴』:春野小五郎にウットリ

宝塚も随分ご無沙汰でしたが、そもそも花組さんとはあまり縁が無かったワタクシ。
前回の『ファントム』(←コビット版のオペラ座の怪人)は本当に観たかったケドついにチケが入手できず。次の花組公演が『黒蜥蜴』と知って「絶対に観にいこう!」と大変楽しみにしていたのですが、行って良かったです♪
江戸川乱歩原作の『黒蜥蜴』。三島由紀夫の脚本を三輪明弘が演じた松竹映画(←元は舞台)の面白さは忘れられません!! 逃げている途中で鏡に映った自分の姿にウットリ(爆笑)。あ、京マチコの映画版も綺麗でした~。松吉に「黄色いワニ(カバだったか?)」の位を授けるんですよ(爆)。そして明智小五郎といえばテレビ版で活躍された天地茂さん。本当に格好良くてダンディで憧れでした。…リアルタイムで観てる年代じゃないですけど(必死)。

今回の宝塚バージョン。いや~本当に春野寿美礼さんの明智小五郎が格好良い。ちょっと憂鬱そうな、それでいて誠実な雰囲気で素敵でした。黒蜥蜴の桜乃彩音さん。華奢で可愛らしい感じなので最初は「ええっ!!」と思ったのですが、これがまた凄く良かった。観ているうちにドンドン「…本当は純情なのよ」という黒蜥蜴の台詞に納得してしまう「宝塚の黒蜥蜴」にピッタリでした。話の展開や結末も「そういう風に変えたんだ~」とワクワクしながら観れましたし、雨宮役の真飛聖さん、小林少年役の桜一花さん、早苗役の野々すみ花さん、と脇キャストにも感心しました。『ファントム』のDVD買おうかしら…。



舞台は銀座のクラブ「黒蜥蜴」。三輪さんといい、京マチコさんといい、小説のイメージでも肉感的で色っぽい美女というのが黒蜥蜴だと思っていたので、桜乃さんの華奢さと可憐な雰囲気に緑川夫人の登場シーンではかなーり驚きました。娘役らしくてとても綺麗な方ですけどね。ところが、人を殺して逃げてきた雨宮を宥める喋りっぷりにちょっと唸りました。あくまで可愛いんだけど、なんとも色っぽいというか「小悪魔」なあしらい方なんですよ。彼女は本当に台詞が「ヅカ調」でありながらも活き活きとしているというか、嫌味なく色気があると思いました。もっとも「♪戦争が終わった~」(←設定は戦後10数年)と唄い出してまた吃驚。マジですか!? って位に…。えっとルックスが本当に良いのと、喋りが巧いから足せばお釣りがでるけど、、、宝塚のトップですよね。。。
あ、黒蜥蜴の刺青が背中だったのにもちょっとビックリ。確か二の腕だったはずなのに…。舞台だから遠目にもわかるサイズを入れたかったのかしら???
そしてトップの春野さんが登場。きゃ~っと黄色い声をあげたくなるような位に白の三つ揃いとお帽子が似合って素敵でした。お声がまた太くて温かみがあるし、歌もお上手でウットリ。ただ、ホテルでの「♪退屈だ~、仕事は退屈だ~」の曲位しか印象に残るメロディが今回の作品には無かった(汗)。『愛するには短すぎる』はお持ち帰りできる曲が多かったのに…。まぁ、仕事しながら「♪退屈だ~」と口ずさみそうな予感はアリアリですけど(笑)
宝石商の岩瀬氏(夏美よう)の依頼で黒蜥蜴から誘拐の犯行予告があった令嬢早苗(野々さん)をガードする仕事を引き受けた明智小五郎。でも彼は仕事への情熱が薄れていた。一方、早苗の友人緑川夫人(=黒蜥蜴)はそんな明智に賭けを申し出る。「早苗が誘拐されたら明智は探偵を止め、犯人を捕まえたら緑川夫人の宝石を全部あげる」。
でも彼女が黒蜥蜴だから、早速部屋に連れ込んだ早苗を気絶させてトランクに入れ、自分が早苗に変装して岩瀬氏を睡眠薬で眠らせる。「父親なのに気づけよ!」という程度には似ている変装でしたが、人形の首を抱えて微笑むあたりがサロメのイメージのように「可憐な少女だが危険な悪女」という感じでとても印象的。ロビーに待機する明智は友人の波越警部に「探偵の仕事に退屈している」とか「たまたま有名になったときに名乗っていたのが明智小五郎という名前」(←これが伏線だった)などと話していると電報が。「午前二時」の黒蜥蜴からの犯行予告に部屋に駆けつけると早苗が人形に!! 探偵を辞めろと詰め寄る緑川夫人に「早苗は無事」といって連れて来る明智。ホテルの周囲を見晴らせていたので、大きなトランクを持って出てきた怪しい男と格闘の末に早苗を保護したんでした。ここで登場する小林少年役の桜一花さんが本当にキュート。元々は男役?それとも娘役??? 活発な少年らしくて半ズボン姿も似合うし。それに部屋で早苗をトランクに入れた雨宮役の真飛さんも「潤ちゃん、髭をそったら二枚目だったのね」と黒蜥蜴がからかうのがピッタリな陰のある色男でツボでした。早苗が下着姿で寒かろうとトランクの中に毛布を入れてあげる優しいとこもあるのよ。
黒蜥蜴としての正体がばれた緑川夫人が不敵に拳銃を振り回すところも小気味よかったですし、そんな「悪女っぷり」を見せ付けられた明智小五郎はやる気充填! 口説きおとすぞ~、じゃなくて、あいつを捕まえるぞ~~と仕事への情熱を取り戻します。
屋敷の中で情緒不安定な早苗の変わりように振り回される使用人達。波越警部のプロポーズ話に「私には誰もそんなこといってくれないーーー」と泣き出すしで周囲がオロオロしていると小林少年だけは事情を知っている。実は彼女は葉子という早苗の替え玉だった!! 最初は本当に細くて(遠目でもあの身体の細さにはビックリ)子供っぽく見えるだけ、と思った野々さんでしたが、この人も素晴らしかった。明智に「最初はあなたは早苗さんを守るために全力で私をガードしていたけれど、今は黒蜥蜴をおびき寄せる餌として私を守っている」と詰め寄ったりするところで、とても孤独で寂しい身の上や明智への強い憧れをひしひしと感じました。結局雨宮に気絶させられてソファーに隠され、連れ出されるんですが、明智はそんなことはお見通し。
上野公園の浮浪児たち。う~ん、昭和30年代なら確かにまだそういう子たちも…。岩瀬氏を呼び出して「エジプトの星」を奪う黒蜥蜴ですが、売店のおばちゃんに衣装を取り替えてもらい、側のおじさんに「変な男につけられているので、出口まで一緒に歩いて」と頼む。そして汚いおじさん相手に「私にも昔、お兄ちゃんがいたの…。私、こう見えても本当は純情なのよ。。。」と戦争で親をなくしたことを話す桜乃さんは本当に可愛らしくて、黒蜥蜴がこんなに素直で可憐でいいのかしら!? と思うほどでした。そして車に乗った黒蜥蜴を見送って、「初めてのあいつとのデートがこんなだなんて!」と嘆く変装していた明智さんでした(笑)。
この後浮浪児に変装していた少年探偵団(と聞くとどうしてもワクワクするワタクシ)の報告を聞き、車で黒蜥蜴を追う明智小五郎と波越警部。幕状のセットの一部が開いて空中に車が出る演出と、車輪と黄色い中央分離帯が動くことで走っている!っちゅう演出に腹筋が鍛えられました。しかも黒蜥蜴と雨宮の車も同じパターンで登場するし。どうでもいいけど二台とも左ハンドルでした。いや~、たまにヅカ演出は想像を超えてくれます(爆)!
やがて船へと乗り込んだ黒蜥蜴一党、ソファーの中に人がいることに気づき、明智小五郎と話を交わすと、そのままソファーを海へと放り投げさせる。やることが大胆ですね。それでいて「頭は弱い」船員の松公を相手に「殺したかった相手だけど。。。好きだったのよ!! 明智さん…」と嘆く。ヅカ蜥蜴はとことん悪にはならないようです。戦争で離れ離れになった兄から貰ったコマを大切にする一途さもあるし。
この黒蜥蜴さんの楽園。緑の美女ダンサーS(カナリヤみたいだった)には誰でも驚くなー。自分のことを好きだという雨宮は「ならあなたは私を裏切ることになる」と早苗と共に牢屋に閉じ込める。ここで「私は早苗さんではなくて身替りを頼まれたただの娘…」という野々さんの孤独な身の上と雨宮のさり気無い優しさへの感謝、誰かを愛したいと思う気持ちの吐露がとても真に迫っていました。自首して罪を償って、私はあなたを待って支える!と切々と語られれば雨宮でなくても絆されちゃう。そういえば二番手の真飛さんとトップの春野さんが対峙するシーンが一度もなかったんですけど(変装ではあるけど)、ヅカでそういうパターンってかなり珍しくないでしょうか。華麗なるツーショットが無かったのはちょっとがっかり。。。
一方船員の松公に変装していた明智小五郎。黒蜥蜴は「愛しているから自首して罪を償って」と迫る明智に一旦は承諾したものの、「…これを君に、意味は後で教える」と渡された押し花をみて(かつて黒蜥蜴が兄に渡したもの)…。
なんと二人は兄妹ですかい!? と展開に唖然としていると、勿論、お兄ちゃんを好きになったことを悔やんで黒蜥蜴さんはピストル自殺。相手が自分の妹だと知った明智小五郎は半年も立ち直れずに仕事を休む有様。結局形見の押し花に「生きて…、自分を責めないで」と書かれていたことに気づき、小林少年と新たな事件に向かっていくのでした。
流石に宝塚。黒蜥蜴までもが「清く、正しく、美しく」路線。でもこういう展開も好きだなー。何といっても春野さんの明智小五郎の格好良さと、桜乃さんの「本当は純」というのがピッタリな悪女っぷりのバランスがとても良かった。この二人の組み合わせはまた観たいです。←おや?

レビューの感想は、、、割愛します(爆!)。

ということで期待を上回る素敵な『黒蜥蜴』の感想でした。
by ayaryna | 2007-04-15 22:37 | ミュージカル | Comments(0)

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